すべて“自然”にこだわった
家族3人で暮らすワンルームの住まい

今回お話をうかがったのは、神戸市内のマンションの最上階に一家で暮らすYさん。以前は新築マンションに住んでいましたが、趣味や仕事、子育ての影響で自然派志向になり、中古マンションのリノベーションで理想の暮らしを目指すことに。

風通しや自然素材にこだわり、選んだのは「ワンルーム」という設計。断熱材や冷暖房器具、収納家具から洗面所まで、暑い夏も寒い冬もストレスフリーに暮らすための徹底したこだわりをご紹介します。

■DATA
住所:兵庫県神戸市
スタイル:中古マンションリノベーション(購入時築20年)
費用:約3,000万円<物件購入1,600 万+リノベーション1,400 万円>
家族構成:夫(会社員/40代)・妻(自営業/40代)・息子(保育園)
フロッグハウス担当者:笹倉みなみ

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趣味や仕事から「自然に近い暮らしをしたい」と思うように


【部屋を壁で区切らずワンルームにし、風通しの良さを最大限にいかしました。】

結婚した20代の頃にはまだ「こういう風に暮らしていきたい」というビジョンがなくて。
明石市の新築マンションを購入し、そこで約10年間暮らしました。

私は結婚後にサロンを開業し、アロマやハーブなど植物療法で「自然にきれいになろう」という方針でやっています。30代になってからは夫婦で山登りにハマってしまって。子どもが生まれるまでは山に行きまくっていました。

そんな生活をしていたので、「自然に近い暮らしがしたい」と思うようになり、新築マンションでの暮らしに違和感を持つようになって。自然素材で一から家を建てられたらいいんですけど、資金的になかなか。それだったら、「箱よりも中身にお金をかけた方が良い」と考え、マンションを売ったお金で中古マンションを購入し、リノベーションをすることにしました。

意外にもマンションがわずか1週間で売れてしまったため、UR賃貸で約2年間、仮住まいをしながら中古物件を探しました。URは丘の上にあり、風通しがとてもよかったんです。「風通しがいいとこんなに涼しいんだ」と気づき、新しい家は風通しにこだわって探しました。

そうして見つけたのが、このマンションの最上階角部屋です。周りに遮るものがなく、窓も多いので風通しがとてもいいです。仮住まいでコストはかかってしまいましたが、妥協せずに探せたので結果的にはよかったと思っています。

「一緒に楽しんでくれそう」とフロッグハウスに依頼

はじめは、自然素材での施工例が多い別の建築事務所にお願いするつもりでした。ところが話を進める中で「マンションだったら大体間取りは決まっていますね」と言われて。「なんだかおもしろくないな」と思っちゃったんです。

フロッグさんは自然素材のイメージはなかったけれどリノベの施工例が多く、おもしろいことをたくさんされている印象があって。「一緒に楽しんでやってくれそうだな」と。以前、私のサロンのちょっとした工事をお願いしたことがあり、安心感もあったので、最終的にフロッグさんにお願いすることにしました。担当の笹倉さんはアイディアが豊富でいろんなことを教えてくださって、すごくおもしろかったです。


【山登りが趣味のYさんらしく、木曽の道の駅で買った丸太を使って照明器具に!】

「こういう風にやりたい」という希望は事前にしっかりお伝えしました。仮住まい中に息子に喘息の疑いがあったこともあり、とにかく「家の中の空気をきれいにしたい」という思いがあって。高温多湿な日が年々増えてきているので、カビ対策もしっかりやりたいと考えていました。


【Yさんの風通しへのこだわりは、廊下へ続く建具にも。ご自身でネットで見つけたアンティーク建具は、格子が開閉可能になっています。】

あとから手を加えられない“土台”部分を優先

風通しを良くしたくて、あえて壁を作らずワンルームにしました。あんまり何もないのも落ち着かないと思い、冷暖房器具の“パネルシェード”をちょっとした間仕切り代わりにしています。


【食卓も寝るスペースも同じ空間にありますが、パネルシェードを間に設置することでゆるやかに間仕切りをしています。(写真左がパネルシェード)】

私はエアコンの風が嫌いなので、何か他の冷暖房がないかと探していたらパネルシェードを見つけたんです。夏も冬も使えて、音も出ないし風も出ないし、空気を汚さないので快適です。


【パネルシェードは、暖房時は温水、冷房時は冷水が内部を流れ、部屋の温度を調整します。】

土台の部分はあとから手を加えられないので最初にやっておきたいと思い、断熱の優先順位を高くしました。断熱をしないと結露してカビが生えてしまい健康に良くないので…。
フロッグさんに勧められて「セルロースファイバー断熱」を三方の壁と天井に採用しましたが、これがとても良いです。

冬が本当にあったかくて。家に帰ってポカポカしているから「暖房つけっぱなしで出ちゃった」と勘違いすることも。窓を二重にしている効果もあると思いますが、これはとってもおすすめですね。最近は夏が暑すぎるので、夏に外の暑さをシャットダウンしているかどうかは、よくわからないのですが…。

床には厚みのある杉材を全面に敷いてもらいました。踏み心地も柔らかいし、床に座っていても気持ちいいです。最初は傷が気になって息子が何か落とすたびに怒っていたんですが、もう諦めました(笑)味ですよね。


【一番広いバルコニーへの扉が腰高窓だったため、小上がりを設置して洗濯物を干しやすい動線を作りました。息子さんはここでずっと遊んでいて、子ども部屋代わりになっているそう。】

壁と天井は湿気対策を考えて珪藻土にしました。私のサロンの壁は漆喰を塗ったので、今度は違うものにしたいなと思って。珪藻土は、臭いも取ってくれるんです。トイレも珪藻土にしていますが、全然臭わないんですよ。


【見た目にも味のある、珪藻土の壁。】

暮らしの質を高める、数々のアイディア!

壁面に収まるように、可動式のクローゼットを設置しました。子どもがお年頃になったときに、これを動かして壁代わりにしたいと思っています。完全なお部屋ではないけれど、ある程度の目隠しになるかなぁと。引き戸にも背板にも有孔ボードを使ったのは、間仕切りにしてもしっかり風を通すため。これで満足してくれたらいいのですが…。


【キャスター付きの収納「コローゼット」は、壁のサイズに合わせて大工さんが手作りしたもの。】

私の一番のお気に入りは、ランドリールームです。元々洋室だった部屋にお風呂と洗面台を移し、室内に洗濯物がしっかり干せるようにしてもらいました。梅雨や花粉の時期は室内に干すことが結構多くなるので、こうして広めのスペースで除湿器を置いて使っています。


【しっかり干せるスペースがあるランドリールーム。ここに洗濯物を干すのは、息子さんの担当だそう。】


【洗面所の横に設置したタオルウォーマー。手や顔を拭くタオルはここにかけておくことで常に乾いた状態にし、生乾きの臭いも気になりません。】

中古リノベをやってよかったという思いはすごくありますね。この家に引っ越してから本当に快適な暮らしができています。

やっぱりこれからの時代って「どんな不動産を所有しているか」よりも「どんな暮らしをしているか」という価値の方が重んじられていくと思うんです。予算がふんだんにないのであれば、土地などの外側よりも、長くいる場所だからこそ、内側にお金をかけるべきだと思いますね。

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とにかくこだわりぬいたYさん邸、いかがでしたか?今回はオンラインでの取材だったため、実際にお邪魔することはできなかったのが悔やまれますが、Yさんが自然素材にこだわる先には「暮らしの質」という価値が見え、「素敵なお宅だなぁ」と同時に「素敵な暮らしをされているなぁ」という印象を受けました。”暮らしの質を求めるからこその中古リノベ”という新たな気づきを与えてもらったインタビュー取材でした。

<取材・文: 村崎 恭子 >