グリーンハイツ松本
神戸市垂水区の築40年ほどの賃貸マンション。
おこのみ賃貸の施工を行う「フロッグハウス」の
オフィスもこのマンションの1室にあります。
この物件の最大の特徴は入居者さんが自由にDIYできる
「フリーウォール」。住む人の個性が表れるお部屋です。
現在は6室がリノベーション済み。


入居者代表 加納 義之さん・会社員
古い家を購入してリノベする前に
賃貸で練習できるのが魅力でした

シェアハウスを営む友人の影響で、おもしろい賃貸物件を探していました。
いつかは古い家を買ってリノベーションをしたいので、自由にDIYできる
賃貸物件で練習ができるのはいいなぁと思い、こちらに決めました。

フリーウォールはDIYで黒板に。ガルバリウム鋼板を貼り、その上から
黒板塗料を塗っているので、マグネットをくっつけることもできます。
特に経験はないのですが、インターネットで調べ、友人たちに手伝って
もらいながらやりました。ガルバリウム鋼鈑を貼るのに2〜3日、黒板塗料は
みんなで塗ったので2〜3時間ほどで完成しました。

壁を黒板にするのは最初から決めていました。家に黒板があることに
憧れていたので。黒板ってなんか遊べて楽しいじゃないですか?
絵を描く以外にも遊べるようにしたくて、マグネットがくっつくように
したんです。
カレーを作るのが好きで、スパイス類を黒板にくっつけて収納しています。
スパイスって見た目だけではわかりづらいので、名前をチョークで
描いて、戻す場所を間違えないようにしてるんです。
このオープンキッチンで料理するのはとっても楽しいですよ。

壁以外にもこれから変えていきたいところはたくさんあります。
ライトやカーテンも変えたいし、壁も飽きてきたら、ボルダリングを
つけてもいいかなぁと。リサーチ会社勤務という職業柄、僕、めちゃくちゃ
調べるんですけど(笑)、今はいろんなものを調べているところです。

転勤さえなければ、もう何年か住むつもりです。自分で考えていろんなことができるので、住んで良かったなぁと。
将来的に中古物件を買ってリノベしたい人にとっては、トライアルの場としてすごくいいと思いますよ。
床材

リビングのフローリングの太さがと、
キッチンのタイルの大きさが好きですね。
この太さのフローリングって、賃貸ではかなり少ないと
思います。自分でDIYするならこのフローリングにしたいと
思っていたんですよね。
今後のアレンジ予定

ライトを備え付けのものから「浮き球」のライトに取り替えようと思っています。
ほかにも、自転車を壁に立てかけられるようにスタンドをDIYできないかと、検討しているところです。


フロッグハウス代表・清水大介
「これは絶対おもろくなる!」と。事務所としても居心地が良くて居座っています。

管理会社さんから紹介され「グリーンハイツ松本」と出会いました。天井裏をのぞかせてもらって、「うわ、広っ!」と。「これはおもしろくなる!絶対いけるで!」とみるみる自信がわいてきて、出来上がったプランと絵を持っていったところ、松本さんも「ええやん、どうぞ」と受け入れてくださいました。

まずは隣り合う2戸からスタートし、うち1戸は事務所として僕たちが借りています。他の部屋と同じリノベをしているので、モデルルームにもなるかと思って。満室になったら出ていく予定だったのですが、居心地がよくて結局ずっと居座っています。(笑)

ここの特徴が、1面の壁だけ入居者さんが自由にカスタマイズできる「フリーウォール」。以前から僕らがよく使ってきた手法です。「ある程度は入居者さんの自由に」というのが「おこのみ賃貸」の考え方で、「リノベ:カスタマイズ」の割合は物件ごとに異なります。ここの割合は、8:2くらい。家を探している人に、「同じ間取り・家賃で、自由にできるならこっちの方がお得だな」と思ってもらえるかな、と。


フロッグハウス設計士・笹倉みなみ

部屋ごとにテイストをちょっとずつ変えています。床材も部屋ごとに違っていて、「男前」「ナチュラル」などバリエーションを持たせているんですよ。
限られた予算内でかっこいい仕上がりにするために、かなり努力しました。中でも工夫したのがキッチン。かっこいいキッチンを買うとめちゃくちゃ高くなるんですけど、お手頃なキッチンの側面に囲いをつけることで、いい雰囲気になりましたね。

モデルルームを兼ねた事務所には、管理会社さんがいろんな物件のオーナーさんを連れてきてくださいます。「ええやないか!」「知らんかったで」と言ってくださる方もいて、ここがきっかけで次の仕事につながっています。松本さんにはとても感謝しています。

こうして思い返すと、「グリーンハイツ松本」には思い出がいっぱいありますね。(笑)

高い天井

これだけ梁がきれいに出てるのは「グリーンハイツ松本」ならでは。賃貸でこの天井高はありません。
キッチン

側面を囲うことでいい雰囲気を醸し出すオープンキッチン。フリーウォールは、棚使いしています。


オーナー・松本幸人さん
ある程度お金をかけて若者の胸に響くリノベーションをしたほうがいいと思いますね

「グリーンハイツ」は昭和51年築で、もう40年ほど。このあたりはもともと百姓ばかりだったのが、道路ができて街が開けてきた頃に、みんな一斉に賃貸マンションを建てて。うちもそのひとつですね。

ちょうど平成に入ってから、入居者が減ってきました。山が開けて新しい住宅地が出来ると、みんなそっちに行くようになって。若い人は新しいほうが好きやしねぇ。退居後の部屋の現状維持改装はしていたけど、ニーズには合ってなかったでしょうね。
フロッグハウスさんとの出会いは、2016年の4月に管理会社さんに「こんなリノベーションやる人おんねんけど興味ない?」と声をかけられたのがきっかけです。パンフレットを見せてもらい、「いいんじゃない」と。細かな打ち合わせは管理会社さんにお任せしたので、私は最初と最後だけ。
まさか、あそこまでになるとは思わなかったね(笑)おもしろいなぁと。
天井が取れて空間が広くなり、元と比べたらかなり開放感がありますね。
あとはやっぱり、台所が印象的かな、オープンキッチンで。
若い子はオープンキッチンを選ぶでしょ、あれはいいと思います。
改装後、これまでと比べて反応が良くなったと管理会社さんから
聞いてますし、今後もああいう部屋は増やしていきたいですね。

同じように、建物はそのままで中を改装しているオーナーは多いです。
でも、「うちは金かけへん、かけてもムダ」って人も多い。
私は、何年で消化できるかをしっかり考えた上で、ある程度お金をかけ、
若者の胸に響くものにしたほうがいいと思いますけどね。


階段・廊下などの共用スペースも
見違えるほどきれいになりました。

編集後記 

はじめて訪れたとき、まずは、大きな窓が特徴的な南側の外観にテンションがあがってしまった私。共用スペースも、階段踊り場の窓の形が丸みを帯びているなど、昭和の要素をいい具合に残しながらきれいに改装されています。

フロッグハウスの事務所、そして加納さんのお部屋は、「こ、これで家賃5万円台!?」と目を疑いたくなるほど。笹倉さんの手がけた“男前テイスト”が、めっちゃいい感じに仕上がっています。「私もここに事務所を開設できないものか・・」なんて思考が頭をよぎりました。そりゃ、居座りたくなるはずです。

入居者の加納さんは、ここでの暮らしを心から楽しまれていて、本当にうらやましい限り!住み始めた当初から、色んなことを調べては実践しているそうで、ここでは紹介しきれないぐらい、彼なりの工夫がたくさんありました。

みなさん揃って気に入っていたのが、「高い天井」と「オープンキッチン」。作り手のこだわったポイントは、入居者さん・大家さんにも響くのですね。まさに三位一体!

既にかっこよく完成していながらも、自分でほどよく手を加えられるので、DIY未経験の人でも、とっても楽しく暮らせる物件だと思います!

取材・執筆:村崎 恭子